蜂の子とうなぎの比較で分かる大きな違いとは?
蜂の子はとても栄養価の高い健康食品です。しかし、一般の人が思い浮かべる栄養価の高い食品と言えば、土用の丑の日に食べる「うなぎ」ではないでしょうか。
ここでは、蜂の子とうなぎの栄養価や効果などを比較しながら、その違いについて解説しています。
蜂の子とうなぎの味の比較
蜂の子とうなぎは、味がよく似ているという人が多くいます。
人によって味覚は違うため、一概に否定することはできません。
しかし、蜂の子とうなぎが似ているのは味つけと指摘する人も多くいます。
蜂の子の味
蜂の子の味の感じ方は人によって様々です。
まれに蜂の子を生で食べる人もいます。しかし、生の昆虫は寄生虫がいるおそれなどもあるため、推奨されることではありません。
このことは国際連合食糧農業機関(FAO)も詳しい調査の必要があるとしています。
蜂の子をより安全に食べるためには加熱調理することが良いでしょう。実は、この加熱調理が蜂の子の味を大きく左右しています。
蜂の子の食べ方は「甘露煮」「蜂の子ご飯」「バターソテー」が一般的です。特に甘露煮は瓶詰などでも販売されていて、通販で簡単に買うことができます。そのため、蜂の子の味を表現する場合、蜂の子の甘露煮の味を表現する人が多いのも事実です。
つまり、蜂の子の甘露煮の味が、うなぎの味に似ていると言われているのです。
うなぎの味つけと比較
うなぎは「かば焼き」「うな重」という食べ方が有名です。うなぎの刺身もありますが、かば焼きなどと比較すると知名度に大きな差があります。
そのため、うなぎの味と言えば、ほとんどの人が、かば焼きやうな重の「タレの味」を思い浮かべるのではないでしょうか。
かば焼きのタレは、醤油、みりん、砂糖、酒などで作ります。隠し味を加えることもありますが、大まかな材料はこれくらいです。しかも、これは甘露煮の味つけに使う材料と同じです。
つまり、味つけに使う材料が同じだから、蜂の子とうなぎの味が同じだと感じてしまっているという指摘が成り立つのです。
蜂の子とうなぎの栄養価の比較
蜂の子とうなぎは、どちらも栄養価が高い食品です。
どちらもビタミンやミネラルが豊富に含まれていますし、アミノ酸なども豊富に含まれています。
蜂の子とうなぎの主な栄養価
蜂の子とうなぎ、可食部100グラムあたりの主な栄養価を一覧表で示します。 どちらも、文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より抜粋しています。 また、一部の栄養素の1日の摂取目安量、または推奨量を厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」より抜粋して併記しています。
可食部100gあたりの成分 | 蜂の子 | うなぎ(養殖、生) | 男性(30歳)目安量または推奨量 | 女性(30歳)目安量または推奨量 | |
---|---|---|---|---|---|
エネルギー | 250kcal | 255kcal | 2650kcal | 2000kcal | |
たんぱく質 | 16.2g | 17.1g | 60g | 50g | |
脂質 | 7.2g | 19.3g | ― | ― | |
炭水化物 | 30.2g | 0.3g | ― | ― | |
ビタミンA | β-カロテン | 500µg | 1µg | ― | ― |
レチノール活性当量 | 42µgRAE | 2400µgRAE | 900µgRAE | 700µgRAE | |
ビタミンE | トコフェロールα | 1.0mg | 7.4mg | 6.5mg | 6.0mg |
トコフェロールβ | 0mg | 0mg | ― | ― | |
トコフェロールγ | 0.8mg | 0.1mg | ― | ― | |
トコフェロールδ | 0.2mg | 0mg | ― | ― | |
ビタミンK | 4µg | 0µg | 150µg | 150µg | |
ビタミンB群 | ビタミンB1 | 0.17mg | 0.37mg | 1.4mg | 1.1mg |
ビタミンB2 | 1.22mg | 0.48mg | 1.6mg | 1.2mg | |
ナイアシン | 3.8mg | 3.0mg | 15mg | 12mg | |
ビタミンB6 | 0.04mg | 0.13mg | 1.4mg | 1.2mg | |
ビタミンB12 | 0.1µg | 3.5µg | 2.4µg | 2.4µg | |
葉酸 | 28µg | 14µg | 240µg | 240µg | |
パントテン酸 | 0.52mg | 217mg | 5mg | 4mg | |
ミネラル | ナトリウム | 680mg | 74mg | ― | ― |
カリウム | 110mg | 230mg | 2500mg | 2000mg | |
カルシウム | 11mg | 130mg | 650mg | 650mg | |
マグネシウム | 24mg | 20mg | 370mg | 290mg | |
リン | 110mg | 260mg | 1000mg | 800mg | |
鉄 | 3.0mg | 0.5mg | 7.5mg | 6.5mg | |
亜鉛 | 1.7mg | 1.4mg | 10mg | 8mg | |
銅 | 0.36mg | 0.04mg | 1.0mg | 0.8mg | |
マンガン | 0.76mg | 0.04mg | 4.0mg | 3.5mg | |
食塩相当量 | 1.7g | 0.2g | 8.0g以下 | 7.0g以下 |
蜂の子の栄養価と比べると、うなぎの栄養価はバランスが良くありません。
例えば、体内でビタミンAとして機能する量を表した「レチノール活性当量」は、うなぎは1日分を軽く超えています。しかし、ビタミンB2は1日分の半分にも満たない量しか含まれていません。
また、鉄分などは10%しか含まれないという結果です。
つまり、上手に摂取しなければ、過剰摂取になる栄養素が出るおそれがあるのです。
一方で、蜂の子にはすべての栄養価が、1日分を突出して超えるような量が含まれていません。
そのため、どれかの1日分の栄養素の補うことはできませんが、食事などで不足した分を適度に補うことができるのです。
蜂の子とうなぎのアミノ酸
蜂の子とうなぎ、それぞれ100グラムに含まれるアミノ酸の量を一覧表で示します。ここで示すのは、食事などで摂取しなければならない必須アミノ酸の量です。
うなぎは文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編」より抜粋しました。
また、蜂の子のデータは山田養蜂場の情報サイト「みつばち健康科学研究所NEWS」で解説に用いられているデータを引用させて頂きました。
必須アミノ酸 | 蜂の子 | うなぎ(養殖、生) | 男性の1日の摂取目安量(体重65kgの場合) | 女性の1日の摂取目安量(体重55kgの場合) |
---|---|---|---|---|
ヒスチジン | 0.22g | 0.59g | 0.650g | 0.55g |
イソロイシン | 0.43g | 0.61g | 1.30g | 1.10g |
ロイシン | 0.66g | 1.10g | 2.535g | 2.145g |
リジン | 0.58g | 1.30g | 1.95g | 1.65g |
メチオニン | 0.20g | 0.47g | 0.65g | 0.55g |
フェニルアラニン | 0.33g | 0.60g | 1.625g | 1.375g |
トレオニン | 0.31g | 0.68g | 0.975g | 0.825g |
トリプトファン | 0.09g | 0.13g | 0.26g | 0.22g |
バリン | 0.49g | 0.70g | 1.69g | 1.43g |
必須アミノ酸の摂取目安量は厚生労働省もWHOの基準を採用しているので、WHOが提言する「体重1キログラムあたりの摂取目安量」から算出しています。
必須アミノ酸については、うなぎのほうが多く含まれています。そのため、うなぎを摂取することでかなりの量を賄うことができます。
しかし、食事では様々な食材を摂取します。ほかの食材にも必須アミノ酸は含まれているため、蜂の子の分量が少ない訳ではありません。
蜂の子とうなぎの非必須アミノ酸
蜂の子とうなぎ、それぞれ100グラムに含まれている非必須アミノ酸の量を一覧表で示します。
うなぎの非必須アミノ酸の量は、文部科学省の「日本食品標準成分表2015年版(七訂)アミノ酸成分表編」より抜粋して使用しています。
また、蜂の子の非必須アミノ酸の量は、山田養蜂場の情報サイト「みつばち健康科学研究所NEWS」で紹介されているデータを引用させて頂いています。
非必須アミノ酸 | 蜂の子 | うなぎ(養殖、生) |
---|---|---|
グルタミン酸 | 1.29g | 2.20g |
アスパラギン酸 | 0.76g | 1.50g |
プロリン | 0.57g | 0.97g |
アラニン | 0.45g | 1.20g |
グリシン | 0.41g | 1.70g |
チロシン | 0.41g | 0.47g |
アルギニン | 0.40g | 1.10g |
セリン | 0.33g | 0.65g |
非必須アミノ酸も、うなぎのほうが多く含まれています。
しかし、非必須アミノ酸は摂取目安量がありません。その代わりに、様々なアミノ酸で構成されている「たんぱく質」を摂取することがアミノ酸の摂取不足にならない方法と厚生労働省は紹介しています。
主な栄養価の項目でたんぱく質の摂取量を示していますが、この数値は推奨量です。
厚生労働省はこの推奨量とは別に、推定される1日の必要量も示しています。1日あたりの平均的なたんぱく質の必要量は「男性が50グラム」で「女性が40グラム」です。
このことから、まずはたんぱく質を50グラム、または40グラム摂取するようにしましょう。
そうすると、両者は100グラム中のたんぱく質の量に大きな差がないため、どちらを摂取してもアミノ酸の摂取量に大きな違いが生まれないことが分かります。
蜂の子とうなぎの効果の比較
蜂の子の最も有名な効果は耳鳴りの改善です。一方で、うなぎのほうは夏バテ予防です。
しかし、紹介した栄養価の一覧を見れば、蜂の子にも夏バテ予防の効果があるということが分かります。
蜂の子が有名になったのは岐阜大学大学院の研究チームによる論文です。
その論文は、耳鳴りなどの症状がある患者に酵素分解した蜂の子を投与したところ、症状の改善が見られたという内容でした。また、耳鳴りの原因とされるホルモンである「コルチゾール」の低下も見られたとされています。つまり、蜂の子で耳鳴りの症状が改善するということが裏づけられました。
コルチゾールはストレスに応じて分泌量が変化します。そのため、蜂の子のストレスを緩和する効果も耳鳴りの改善につながっています。ストレス緩和には、ビタミンC、カルシウム、トリプトファンが必要です。特にトリプトファンからセロトニンが合成されると、ストレスの緩和につながります。
農林水産省のコラムなどでも、うなぎには夏バテ予防に効果があることが紹介されています。その理由は、ビタミンA、ビタミンB群などが豊富なことに加えて、鉄分や亜鉛などの夏バテ予防に効果的な栄養素が豊富に含まれているからであると明記されています。
ビタミンAは、体の粘膜や皮膚を作るために使われています。特に粘膜部分はウイルスが付着しやすいため、常に免疫機能が十分に働く健康な状態を維持する必要があります。ビタミンAを十分に摂取することで粘膜の健康が維持されるため、免疫力を高めることができるのです。これが夏バテ予防につながります。
また、ビタミンB群は疲労回復のために使われたり、エネルギーを作り出す代謝機能に使われたりしています。どちらも夏バテ予防には欠かせない効果です。
つまり、このような栄養素が豊富なことが、うなぎの夏バテ予防の効果につながっているのです。
それぞれの効果を比較すると、蜂の子にも夏バテ予防の効果があると分かります。
夏バテ予防に効果的な栄養素は、ビタミンA、ビタミンB群、鉄分、亜鉛などと農林水産省も紹介しています。
先に紹介した栄養価の一覧表では、鉄分や亜鉛は蜂の子のほうが多いことが分かりますし、ビタミンB群も一部は蜂の子のほうが多くなっています。
つまり、蜂の子でも十分に夏バテ予防効果があると推測できます。
事実、蜂の子とうなぎのたんぱく質の量はほとんど同じです。
たんぱく質はエネルギー源でもあるので、疲労回復を早めたり体力を増強したりする効果があると専門家は指摘しています。
また、カルシウムやトリプトファンが豊富なため、うなぎにもストレス緩和の効果があります。
しかし、これで耳鳴りが改善するとは限りません。コルチゾールを低下させる効果があっても、蜂の子のように耳鳴りが改善するという裏づけはなされていません。
蜂の子とうなぎの取り入れ方
耳鳴りを改善したいときは、蜂の子を摂取することが良いでしょう。そして、夏バテ予防や体力増強を考えるのであれば、うなぎでなくても良いのです。
また、それぞれをサプリメントで摂取するとしても、材料の価格差からうなぎのサプリメントのほうが市場価格は少し高くなっています。
つまり、いずれの方法で摂取するとしても蜂の子のほうが安くなるのです。
ただし、蜂の子はスーパーなどで手軽に購入できるとは限りません。
地域によっては販売されていることもありますが、一般的にはうなぎのほうが手軽に購入できます。
特に夏場はスーパーの店頭にもうなぎが多く並びます。
そのため、蜂の子にこだわるようなことをしないで、臨機応変に対応することが良いでしょう。